TF director blog #47
皆様こんにちは。TFディレクターの関です。
数日前にフランスに戻ってきたばかりで、時差ぼけの頭を使いながらこの文章を書いています。
フランスは3月20日からまた4週間の外出規制が始まりましたが、今回は10km圏内の移動に関しては時間制限もなく、許可証の必要もないためか、空港からのタクシーからは「え?本当に外出制限中?」というほどたくさんの人が出歩いているのを見かけました。
夏時間も始まって最高に気持ちの良い天候なので気持ちは分かるのですが・・・
日本でも滞在中の最後の週末に、目黒駅方面の目黒川の横をタクシーで通った時にすごい人出だったので、きっと中目黒あたりはパニック(に近い)状態だったんだと想像していましたが、果たして・・・
そんな、なかなか改善していかない情勢ではありますが季節は変わります。
皆様は新しい服を買っていますか?
ファッションに使うお金が減ったというのは、いろいろなメディアで言われて聞き飽きた感もあります。
そういう中で自分たちはどのような服を作って売っていけば良いのでしょうか?
トレンドワードとしての「サスティナブル」ではなく、本当に愛着を持てる服。
着ていく場所がなくても(もしくは機会が減っても)部屋に飾って眺めても豊かな気持ちになれる服があったら。
アートとファッションは別のものですが、鑑賞する服(そして時にはもちろん着ることのできる服)があっても良いのではないかな、と思ったりもするのです。
そんな思いもあってS Hでは新しい取り組みを始めました。
奄美大島で古くから行われている「泥染」
泥染って単純に泥の色(茶色とか?)に染まっているだけなのかと思っていましたが、そうではなくて車輪梅という木のチップを煮出した鍋で染めたものを泥に含まれる鉄分で反応させて色を定着させる、という方法なんですね。
そして奄美大島の泥には鉄分が多く含まれている事から、伝統的に泥染が行われていた、そういう事なのです。
言葉としてはなんとなく聞いたことがあっても、意外と内容までは知らなかったりするもの。
何気なく手にとったシャツが日本の伝統技術に興味を持つきっかけになったら。
そんな思いを持ってこのプロジェクトに取り組んでいます。
皆さんは先日公開された動画をご覧頂けましたでしょうか?
まだの方は是非見て頂ければと思うのですが、動画と同時に写真撮影もしていたのでいくつかご紹介しておきます。
まずは藍染の工程から。
美しい泡立ちをずっと見ていられます。
染めて、空気に触れさせて色を定着、という工程をを5~7回繰り返します。
そして次に車輪梅での染め。
ここで染めたものを屋外の泥田に持っていきます。
この風景最高じゃないですか・・・?
今はこのような状況ですので現地にいるカメラマンに撮影をお願いしましたが、いつか訪れてみたいものです。
この泥に入れる工程で少しずつ黒が濃くなっていきます。
どうでしょう。泡フェチみたいになってきていますが、この写真を見るとこれもなかなか・・・
そして仕上げに泥を川で洗い落とします。
当然ですが、薬品を使用していないので川を汚すことはありません。
テクノロジーが発達した現代に、川で洗って仕上げるシャツがあっても良いと思いませんか?
ファッション産業は環境負荷が大きいので、その方法を見直すという流れは理解できますが、購入する側にとってはそれだけでは物足りないのではと思っています。
格好良い、愛着が湧く、長く使いたい、そういう気持ちが先にあって購入して、その行動が結果的に社会貢献になる、という流れが自然なのかなと。
だって我々がやっている服は必需品ではなく、あくまでも趣味のものだと思うからです。
TFでは10型あったこのシャツも残り4型になってしまっていますが、このBlogを読んでご興味を持たれた方は是非店頭で実物を見てみてください。
黒の中に見えている深い青に見惚れてしまうと思います。
1年後が今から楽しみなシャツです。
それでは皆様、また4月末にお会いしましょう。
気持ちの良い春の一日をお気に入りのシャツで出かける。
そんな最高な過ごし方を、皆様が気兼ねなくできる日が早く来ることを願っています。
TF ディレクター関