TF director blog #60
皆様こんにちは。TFディレクターの関です。
このディレクターブログも60回目です。
5年もやってやっているのかと感慨深くなります。(毎回大したことを書けていないのですが・・・)
100回目指して頑張りますので、気長にお付き合い頂けると嬉しいです。
さて、日本はもうすぐ梅雨入りですね。
洋服好きにはなかなか好きになれない時期ですが、暑過ぎる真夏に比べたら着こなしに工夫ができる楽しさもあるかと思えれば、少しは前向きに捉えられるかもしれません。
本日は最近TF LABOに入荷した革靴のことを。
premio gordoは女性がデザインする革靴のブランド。
女性ならではの感性で、本格的な作りながらも繊細さを感じられるもの作りを行っています。
岡本さんと鈴木さんにも以前インラインのコレクションを見てもらいましたが、少しTFとはテイストが違うかな?という反応でした。
確かにインラインは少しクラシックというか、独特の世界観がありそれがブランドの魅力なのですがTFのスタイルだと少し柔らか過ぎるのかも、という印象もあったかもしれません。
それなら、TFや他のメンズショップのお客様にもご紹介できるようなベーシックなモデルを作ってみましょうか、という話から共同での企画がスタートしました。
あとは自分が”ど”ベーシックなプレーントゥを履きたいというのも作ってもらった一つの理由です。
そして完成した特別なモデルにはBawaという名前をつけてもらっています。
これはスリランカ出身の建築家ジェフリー・バワからきています。
(ちなみにpremio gordoの第一弾モデルはVチップでモデル名はBarragan=メキシコの建築家ルイス・バラガンからとっているそうです)
デザイナー曰く、文化や自然を大切にし景色を一層美しくするような彼の建築が好きで、靴単体ではなくそれがある空間を美しくしたいというブランドコンセプトにも重なるところがあり選んだとのことでした。
そんなとっておきのモデル名を今回使って頂き恐縮ですが、その名に恥じない素晴らしいモデルに仕上がっていると思います。
今回のプレーントゥはぱっと見はポストマンシューズっぽくも見えるようなフォルムですが、低めに抑えられたトゥがビンテージシューズの雰囲気を感じさせます。
それもそのはず、このモデルは工房の隅に置いてあったビンテージの靴を元に木型を作り直しています。
そして張り出し過ぎていない平ウェルトが無骨ながらもワークシューズとは違ったバランスを作り出しています。
余談ですが、2回目に作ったサンプル(全部で3回サンプルを作り直しています)は今より1mm程度ウェルトが張り出していて、ちょっとイメージと違ったので修正しています。
同じ木型で同じ職人が作るのに1mmウェルトの出方が違うだけで、こうも全体のイメージが変わるのかと驚きました。
ソールはオイルドベンズというオイルを染み込ませたレザーソール仕様。
昔はラバーソールの革靴以外履かない!と宣言していたほどですが、最近はレザーソールのものもよく履きます。
ただ普通のレザーソールだと結構滑るんですよね。
某ウェストンの革靴(レザーソール)で2回階段から転げ落ちて死ぬかと思ったのでそれ以来大人しくラバーを張っていますが、オイルドベンズだとラバーを貼らずとも滑りにくく歩きやすいのです。
あとはクッション製と屈曲製も良い印象があります。
アッパーに使われているカーフは、イタリアのインカス社によるベジタブルタンニン鞣しのもの。
革靴でよく見かける黒よりも、透明感のある浅めの黒のように見えます。
黒なのに透明感っておかしな表現に聞こえるかもしれませんが、実際に見て頂くとお分かりになるかと思います。
気品や色気のあるヨーロッパブランドの革靴も素晴らしいですが、この靴からはとても日本らしい美意識「緻密・丁寧・繊細・簡潔」を感じることができます。
と、蘊蓄多めに書いてしまいましたが、普通に見えてたくさんのこだわりを詰め込んだプレーントゥが完成しました。
カジュアルなディテールをドレスシューズの素材と縫製で仕上げて目指したのは「究極のプレーントゥ」。
何を持って「究極」と呼ぶかは人ぞれぞれですが、時代を超える強度を持ったタイムレスで高い品質、尚且つ気負わずデイリーに使えて日常のパートナーになってくれる革靴になったと思います。
たくさんの革靴を履いてきた方にも新しい発見のある納得の仕上がり。そして革靴を普段履かないなという方にこそ、是非試して頂きたい、そんな一足です。
TF LABOにて入荷中です。
それでは皆様、また6月末にお会いしましょう。
お気に入りのファッションで憂鬱な天気を楽しく乗り切れますように。
TF ディレクター関